研究紹介-水素吸蔵合金-

超格子型水素吸蔵合金について

(1) Gd5Ni19合金について
 希土類-Ni系の2元系金属間化合物は、多量の水素を吸蔵することが従来から知られている。Gd-Ni2元系の状態図には、Gd3Ni, Gd3Ni2, Gd-Ni, GdNi2, GdNi3, Gd2Ni7, GdNi4, GdNi5が記されている。GdNi3やGd2Ni7は超格子構造(図1参照)を有する。超格子構造は、c方向にMgZn2-typecellとCaCu5-type cell積層している。通常の金属間化合物(c=4.0A)に比べ、6~12倍程度(c =24.0~48A)の大きな単位格子となる。 本研究では、これまでに報告されていないGd-Ni系の新規超格子型合金の探索を目的とした。合金は溶解法(アーク溶解、高周波誘導溶解)による合成を試みた。熱処理による組織の均一化、TEMやXRDによる結晶構造評価、PCT測定による水素吸蔵放出特性評価を行った。 合金試作や熱処理条件の最適化を繰り返し、新規のGd5Ni19合金の合成に成功した。TEMによって格子像観察した結果(図2参照)、Sm5Co19-type構造を示した。粉末XRDデータやSm5Co19-type構造モデルを用いてRietveld法による結晶構造の精密化を行った。Rietveld解析の結果から実験値と計算値はよい一致を示し、TEMによる結果とも矛盾しないことからGd5Ni19の結晶構造を決定した。233KでPCT測定を行った結果(図3参照)、最大吸蔵量は約1.0H/Mに達し明瞭なプラトー領域は観察されなかった。 試料合成→構造評価→特性評価を一貫して行うことによって、これまでに報告されていなかった新規の構造を有する合金作製に成功した。
超格子構造の例

図1 超格子構造の例

Gd5Ni19のTEM観察像とSm5Co19-type構造
図2 Gd5Ni19のTEM観察像とSm5Co19-type構造

Gd5Ni19のPCT曲線(233K)
図3 Gd5Ni19のPCT曲線(233K)

(2) La2Ni7のIn-situ XRD(その場観察)による結晶構造変化
Ce2Ni7-type構造を有するLa2Ni7合金の水素吸蔵放出過程における金属格子の結晶構造変化をIn-situ測定によって捉えた(図1, 2参照)。試料周辺を水素ガス雰囲気で満たし、PCT測定とXRD測定を同時に実施した。吸蔵過程において、水素吸蔵前の六方晶(Ce2Ni7-type構造)→orthorhombic→monoclinicへ構造変化(図2参照)することがわかった。放出過程においては、monoclinic構造を維持したままPCT測定が終了した。放出過程終了後、真空ポンプによる排気を行った。排気後の測定結果では、orthorhombicを示した。吸蔵放出過程における結晶構造変化が不可逆的であることが明らかとなった。
La2Ni7のPCT特性とXRD測定箇所
図1 La2Ni7のPCT特性とXRD測定箇所

吸蔵過程おける結晶構造変化
図2 吸蔵過程おける結晶構造変化

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